パン屋通いの楽しみ
フランスで好きになった食べ物があります。それはクロワッサン。それまで私が知っていたクロワッサンといえば、パサパサしてて、金魚のえさみたい…おまけに食べるとボロボロこぼれるし、味もそっけもないうえ、小さくて食べ応えがない・・・巷には量り売りのクロワッサンに行列している人がいるのが不思議でなりませんでした。「じゃあ、フランスで本物のクロワッサンを食べさせてあげる」という主人の言葉にも、「どこで食べてもクロワッサンはクロワッサンだろう」ぐらいにしか思っていませんでした。でも、おいしいクロワッサンはやはりフランスに存在していました!!それをクロワッサンというなら、私が知っていたクロワッサンは一体何だったのか・・・?まったく別の食べ物でした!まずは大人の手のひらぐらいの大きさのこの食べ物、軽いだけじゃなく存在感のある重さがちゃんとあり、何とも言えないいいにおいがして、思わずすぐにかぶりつきたくなります。表面はさっくりしていますが、手で裂くと、中の生地は弾力があり引っ張ると伸びるのです。そして、口に入れるとバターの香りがいっぱいに広がって、かみしめると外側のサクサクと中のモチモチ感のコントラストがたまりません!塩味が効いているので、最後まで飽きずに楽しめ、皿にこぼれたかけらまで指で拾って食べたくなるほど・・・!そして、焼きたてのおいしさといったら、もう言葉では表現できません・・・!その翌朝から、焼きたてのクロワッサンを食べるべく、私のパン屋通いが始まりました。パン屋さんは誰よりも早起き。朝の2時3時から仕事を始めます。
そして、たいていは朝の7:00頃から店を開けますから、そこを目指していけば、焼きたてが食べられるのです。パリには星の数ほどパン屋があり、どんな小さな村にも最低2
、3軒のパン屋がありますが、残念ながらそのすべてが美味しいパン屋とは限りません。そのうえ、パン屋の仕事は、boulangerie,(バゲット、カンパーニュなどのパン一般)と、viennoiserie(甘い菓子パン)に分かれていて、クロワッサンはviennoiserieの仕事。viennoiserieはお菓子職人の仕事に近いので、おいしいクロワッサンのお店はお菓子もおいしいことが多いのです。というわけでおいしいバゲットを作る店が必ずしもおいしいクロワッサンを作っているとは限りません。ガイドブックやコンクールなどで賞をとった評判のパン屋もあるので、そういう店を目指すことも出来ますが、自分の口に合うパンを求めるなら、自力で探して、舌で確かめるしかありません。そうしてそういう店にめぐり逢えたら、浮気せず毎日通い詰めるのです。お店の人もこちらを覚えてくれるし、時々おまけをしてくれます。さて、フランス人にとって、パンは主食ではありません。パンはいつも食卓にあるもの。しいて言えば漬物みたいなものでしょうか?だからレストラン入ったら、まず真っ先にパンのかごが運ばれてきます。「パンのおかわりはいかがですか?」なんて訊かれることはありません。そもそもかごには食べきれないほどパンが積まれているし、なくなったらお店の人がすぐにおかわりを持ってきてくれます。そして、家庭では、3食ごとに焼き立てを買いに行くのです。このパンたちの焼き立てもまたたまらなくおいしい。フランスにいる間、パンを買いに行くのは私の仕事。パン屋でも朝、昼、夜の食事時に合わせて焼き立てを出しているので、時々窯から出たばかりの温かいバゲットに出会えるのです。そんな時は誘惑に負け、はじっこをちょっとだけ味見。よく焼けたバゲットはちぎった時の音が違う!皮がパチパチとはじけるようで、その音は音楽みたいに軽やかです。これはもう、パン買い役をかって出たものの特権!「おいし〜い!」と心の中でなんども叫び、歩きながら(フランスでは歩きながら食べてもそんなにお行儀が悪いといわれることはないので!)もうちょっとだけ味見。あっ、もうちょっと・・・と繰り返すうち、家にたどり着くまでには長いバゲットが半分になってることも・・・!そして、私は今朝もクロワッサンを買いに義父母の家を出ました。早春のフランスは7:00近くになってちょうど夜が明けるころ。小さな村の朝焼けの太陽が彩る葡萄畑を横切って、まだ冷たい風をほほに受けて歩くのは気持ちがいい!早足で片道15分の散歩は、朝の食欲増進にはちょうどよく、あのおいしいクロワッサンが待っていると思うと、足取りも軽くなります。店に着くと早朝にも限らず先客が1人、2人。そして漂うのは香ばしいパンの焼けるにおい!「
Bonjour madame, comment allez-vous ?
」お店のマダムといつも変わらない朝の挨拶から始まります。「クロワッサンを2つと、パン オ ショコラと、アーモンドクリームのクロワッサンを1つづつ、それからよく焼けたバゲットを一本下さい。」といつもと同じものを頼むと、必ず「 Bon
appetit 」と言って渡してくれます。私はこの
「 Bon
appetit 」という言葉が大好き。日本語では「召し上がれ」なんて訳されるけど、そうとも違う、もっと食べることを心から楽しんでいる気持ちが込められている気がします。そうして受け取ったクロワッサンの紙袋は、やっぱりまだあったかい!この紙袋に詰まった小さな朝の幸せを家族に持ち帰る時が、至福のときです・・!
(2007年3月)

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ロックフォール村のロックフォール
「ロックフォール」とは、おなじみ、フランスを代表するブルーチーズですね。そのロックフォール村に行ってきました!ちなみに
「ロックフォール」と名乗れるチーズは、このロックフォール村で熟成されたものだけに限ります。フランスでは、ワインやチーズで有名な AOC
(Appellation d'Origine
Controlée)いう、特定地域原産品だけに許された呼称制度があり、めたらやったらの名称をラベルに貼ったりすることはできません。また、何百種
もあるチーズの中でも
AOC
を持つチーズはごく限られていて、原料や作り方など細かな規定があり、生産者たちはこの
AOC
を獲得するために大変な努力をしています。日本ではよく「カマンベール」を名乗ったチーズが店頭に並べられていますが、「北海道カマンベール」とかなんとか名前をつけられたチーズをカマンベール村の人が見たらどうなることでしょう!びっくりするどころか、私などは裁判沙汰になるんじゃないかと、余計な心配をしてしまいます。さて、話をロックフォールに戻しましょう。みなさんはこのチーズお好きでしょうか?数ある個性的なフランスチーズの中にあっても、ロックフォールはかなりの強者ですから、好き嫌いははっきり分かれることと思います。私は大好物!今となっては、日本でも食べることのできるチーズですが、やっぱり、原産地で食べたら、きっともっとうまいんだろう!とはるばる出かけることにしました。
そしてあれだけの風味を持つチーズを作る土地はさぞかし豊かなところなんだろうと勝手な想像をして出かけたロックフォールは
、
何にもない谷あいの本当に小さな村でした。その中で今回は
Papillon
社のカーブを見学しました。(以下はガイドさんの説明を私の仏語能力で聞き取った限りなので、正確な解釈でなかったらごめんなさい!)
ロックフォールの谷は、およそ10万年前に火山の爆発によってできた土地で、その際に地下の洞窟に無数のトンネル(fleurines)ができました
。昔、一人の羊飼いが、羊乳のカードをのせた一切れのライ麦パンをこの洞窟内に置き去りました。何週間後かに戻ってみると、青かびのついたチーズができていた、というのがロックフォール
の由来のようです。(ほかにもいくつかの伝説があるようですが、とにかく、そのカビだらけのチーズを最初に食べた人はよっぽどお腹が空いていたんですね・・・!)牛が食べる豊かな草のないこの土地では、brebis という種類の羊が飼われていて、ロックフォールはじめ、この土地のチーズはほとんど羊乳で作られています。そして、チーズに混入する青かびは今でも、pain
de seigle
(ライ麦パン)から作られています。パン生地を高温で短時間焼き、中を生焼けのまま、何週間か放置します。できたカビを粉末にして使用するのです。このカビ(pénicillium
roqueforti)にはいくつも種類があり、それぞれの名前がついています。有名どころでは、Papillon,
Carles, Societé。そして、作られたチーズは洞窟内のカーブで熟成されます。カーブの温度
は10℃、湿度は95%と一定で、fleurines
の中は常に風が吹き抜けています。この自然が
、ロックフォールマジックを生み出すのです。さてさて、お楽しみの試食タイムは・・・やはり、美味しい!香りも舌触りも、長い間旅をして日本の売り場に並んでいる疲れきったチーズたちとはまったく違いました!その上フランス国内で味わったものとも違うのです!実際ここまで違うとは想像していませんでした。塩加減は強すぎず、でも、ロックフォール特有のピリッとした感じはさらにはっきりしています。カーブの試食だけでは物足りず、お昼には村のビストロでロックフォールを味わうことに!
もちろん、サラダも、キッシュも、お肉のソースもロックフォール。デザートまで、brebisのガトーのまさにチーズづくしのコース。
そして驚いたのはワインの合わせ方です。ロックフォールには貴腐ワインが一番、と思っていたのですが、地元の人に聞くと、多少個性のある赤ワインを勧められました。
ロックフォールに赤??フランス人でも、ワインを知らない人はまったく知らないし、ひょっとすると私の聞き間違いかも・・・と思い、ビストロのムッシュにも確認してみたら、やはりおなじ意見なのです。大丈夫なの?キャラクターが強すぎて喧嘩するんじゃ??
半信半疑で、地元産の赤ワインを合わせてみました。そしたら、これが、合うんです!驚き
でした!というのも、やはり、チーズがフレッシュだからなのですね・・・カーブから直接お皿にのったロックフォールは、本当に口の中ではじける感じがします。ロックフォールに赤。この村でしか味わえない最高に贅沢なマリアージュでした。
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ビストロ大好き!
フランスで食事ができるところと言えば、まずはレストランですね。これには、皆さんご存知のミシュランに載るような高級店もあれば、まあ、ランクは様々。それからカフェでも食事ができます。カフェは大抵、ノンストップで深夜まで営業しているところが多いので、おなかが空いたときいつでも食事ができます。それから、「ビストロ」と呼ばれる食事処。
レストランとビストロ、何が違うかというと、正確なところ、私も定義立てすることはできません。でも、ビストロの方が、レストランよりカジュアルで、値段も安い、そして、ボリュームが満点!といったところでしょうか。ただ、安いといっても、フランスではデザートまでついて「850円」なんていうランチメニューは存在しません。その点、日本のランチは破格に安いです!「食事はゆっくり楽しむもの」という考えのフランスでは、お昼でも2時間ぐらいはかけて食べるし、食後のカフェが出てきてもなかなか席を立つ人がいないので、そんなに安くできないのでしょうね・・・ビストロの魅力は、な
んといっても気取らないところ。制服を着てネクタイをしめたサービス係なんて、まずいません。人気のお店はいつも満席状態ですから、テーブルもぎゅうぎゅうづめです。奥の席に着くためには、店のお兄さんたちが一旦テーブルを引き出してスペースを作ってくれ、着席します。この、普段着でサービスするお兄さんたち、仕事は実にプロフェッショナルです。評判の店は、味もさることながら、サービスがいい!まず第一に、一度来た客のことはきちんと覚えています。そればかりか、何を食べたか、何を話したかまで覚えていることも少なくありません。サービスは「丁寧」でありさえすればいいというものではなく、こういったコミュニケーションができるギャルソンたちがいるお店は、客をリラックスさせてくれます。その上、メニューやワインについてたずねると、即座に答えが返ってきます。「確認してまいりますので、しばらくお待ちください」なんて、バイト的な返事は決してしません。自分たちが提供しているものについて精通しているし、自信を持っています。そこが気持ちいいのです。さて、ビストロでは、その店自慢のメニューや「
Plat
du jour 」と呼ばれる日替わりの一品が、黒板に書かれてあります。ですから、メニュー選びに迷ったら、黒板に書かれているものから
頼んでみるとよいと思います。それから、日本では食べられないものを冒険してみるのも面白いですね。これもまた、たくさんありますから、片っ端から食べようとすると、体がいくつあっても足りませんが・・・それと、私の経験上言えることは、「肉のメニューを中心に食べてください」ということ。フランスでは肉はなんといっても種類が豊富だし、クオリティもいいのですが、魚はいまひとつ・・・レストランで注文すると高い割にはそれほどの味に出会った例がありません。魚を食べたいときは、魚料理を看板に掲げているお店に行ったほうがいいと思います。(単に日本人が魚にうるさいだけなのかもしれませんが!)さて、私がビストロで、あれこれ迷った挙句、注文するのは、大抵、鴨料理。鴨には、オレンジや蜂蜜などの少し甘いソースがとてもよくあいますが、一度食べていただきたいのは、「鴨のコンフィ」。カリカリに皮を焼いたもも肉に、これまた、カリカリに香ば
しくソテーしたじゃがいもがたっぷり!これぞ、ビストロ料理の定番です。骨付き肉なので、ナイフとフォークが苦手な私は、そのままかぶりつきたくなる衝動を抑えつつ食べ進めなければならないのが辛いところです。娘の好物はエスカルゴ。「かたつむり」だと考えると、私はどうも抵抗があるのですが、にんにくとパセリをあわせた「エスカルゴバター」の香りは食欲をそそります。エスカルゴを食べ
た後はこのバターをパンに浸して食べ、最後はパンで皿をすっかりお掃除してしまう私たちです。そして主人はといえば、もっともっと、日本ではお目にかかりにくい料理ばかりをたのみます。それは、臓物料理や、豚足、豚の頭のテリーヌや、牛の骨髄、そして血液を練りこんでいる真っ黒いソーセージ・・・これまでずっと味見を避けてきたので、美味しいのかどうかは未だに分かりませんが・・・そして、どのメインディッシュにも付け合せにじゃがいもやパスタ(こちらはゆですぎのものが多いのであまり美味しくないことが多いけど・・・)がたっぷり
付いてくるので、残したくない方はあらかじめ、「量を少なくしてください」と伝えておくとよいと思います。ただし、値段は変わりません。さて、私たちのお楽しみは・・・食前酒から始まって、前菜、二人でワインを一瓶空け、メインディッシュを終える頃にはお腹の皮ははちきれんばかり。前菜のボリュームもメインかと見まごうほどの量ですから、この辺でギブアップとなってもおかしくはないのですが、デザートのメニューを見ると、不思議なことにまたまた胃袋に隙間ができてしまうのです。チーズはさすがにパスするとしても、せっかくフランスまで来たのですから、甘いものを食べずに食事を終わらせるなんて寂しすぎる・・・ビストロデザートの定番は、クレームブリュレ、クレームキャラメル(カスタードプリン)、ムース オ ショコラ、果物のコンポート、それに様々なタルト、etc.
中でもフランスらしいのは、「
Île flottante
」(イル フロッタント。「浮き島」の意味。)冷たく冷やしたカスタードソースの上にふわふわのメレンゲが島に見立てて浮かべられていて、その上からカラメルがたっぷりかかっています。ふわふわ、カリカリの食感が楽しいデザートです。他に「
Oeufs à la neige
」(ウフ ア ラ ネージュ「卵の淡雪仕立て」)と呼ばれるデザートがありますが、私の試したところ、見た目も味も同じもののようです。日本(仙台)のレストランではまだお目にかかったことがないし、口どけもいいので、お腹一杯でもデザートを外したくない方にお勧めします。甘いものの後にはやっぱり、濃い目のカフェ。そして仕上げは、カルバドスやマールなどの食後酒で胃袋を引き締めます。食後酒「
Digestif
」
には「穴をあける」と言う意味あいがあり、実際「食後酒を飲もう」という代わりにフランス人は、「
On fait le trou
」(穴をあけよう!)と言います。不思議なことに、こういう度数の強いお酒をパンパンの胃袋に流し込むと、なんだかすっきりして「あ、やっぱりチーズもたのんでおけばよかったかな・・・?」と感じてしまうのです。私だけかしら・・・?
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La bonne température
de dégustation.
熱い?冷たい?美味しさの温度
フランスで色んなものを食べるうち気付いたことがあります。それは、食べ物の「温度」のこと。フランス人はすごく熱いものや、すごく冷たいものを食べません。家庭で食べるスープも熱々のものを出された覚えがないのです。レストランで食べるステーキも、熱いというより生暖かい・・といった方が正しい気がするほどです。私の記憶の中で熱々だった食べ物といえば、オニオングラタンスープにラクレット、それにオーブンから出すとしぼんでしまうので急いで食べなければならないスフレ・・・
この3つだけ。フランス人って極端な猫舌なのかしら?一方ものすご〜く冷たいものにも出会ったことがないのです。その典型がカフェで出される生ビール・・・これ、なんだかぬるいんです・・・始めはたまたまかと思ったのですが、どこで飲んでも、夏の暑い盛りの日でもなんだかぬるい・・その上、ときどき、洗い立てのあったか〜いグラスに注がれるもんだからビールはますますぬるくなる・・!買ってきたビールを冷蔵庫で冷やしたものを飲んでもなんだか冷たくない・・・冷蔵庫の温度設定そのものが高いようなのです。これまで飲んだどこの家庭の冷蔵庫のビールもすべて冷たくない・・・これはもう偶然ではありません。果物は冷たいのを出された例がないし、この国は西瓜も冷蔵庫で冷やさない!アイスクリームにいたっては冷たいことは冷たいんだけど、形を保っていられるぎりぎりの温度で固まっているといった感じで、ギンギンに冷たいアイスクリームにあったことがない・・そこである日主人に尋ねたことがありました。「ねえ、フランスのビールってなんだかぬるいのよね・・?」すると、「フランスのビールがぬるいんじゃなくて日本のビールが冷たすぎるんだよ。あんなに冷たかったら味が分からないじゃないか?」という答えが。え?そうなの?・・とあらためて思い起こすと、おとなりのビール大国ベルギーのビールもあまり冷たくなかった・・・ベルギーのビールは香りも味も種類もとても豊富でとても個性的。そういわれてみると、あの香りや風味を十分に味わうには冷やしすぎるとうまくないのかも・・・それからの私は、飲み物食べ物の温度に注目するようになりました。確かにヨーロッパの夏は乾燥しているので、暑い日でも木陰に入ると驚くほど涼しい・・・そういう気候下では、ビールも爽快感を主に追及される必要がないのかもしれません。私たち日本人にとっては渇いた喉に流し込むよく冷えた生ビールは格別の美味しさがありますが、フランス人には「喉が渇いた」からといって生ビールを頼む人はあまりいません。ビールは味や香りを楽しむ飲み物であるから冷たすぎてはいけないようなのです。喉の渇きを癒すためなら、味や香りは二の次
、といえないこともない・・日本のビールは美味しいけど、もともとどのメーカーの味にも大差はない・・ギンギンに冷やしたからといって個性の多くが失わなわれるわけでもなく・・・蒸し暑い日本では冷たくて爽快な喉越しが好まれるのは然り・・・そしてフランスではカフェでジュースや水を頼んでも、氷はまず入ってこない・・・やはり、「美味しい」と感じる冷たさが私たちとは違うらしい。主人は日本で市販のアイスクリームを買うと、フリーザーから出して15分ぐらい放置し、溶けかかったものをいつも食べていた理由がわかりました。「ひょっとして熱いものも味が分からない・・とか?」と主人に訊くと、「もちろんだよ!たとえ美味しいものだったとしても感じられないよ。」という答え。そうかあ・・だから何より肉の「味」を重視するフランス人のステーキが鉄板で出てこないってわけなのね。そして、「熱い」ものを食べることに慣れていないフランス人(主人)のラーメンがどんぶりの中でどんどん増えていくってわけなんだ・・・!「じゃあ、あなたたちに美味しいものの温度って?」「それはもちろん食べるものによってそれぞれ適温があるから一概には言えないよ・・・でも味がよく分かるのは、ぬるいもの、だね。
といっても、フランス人はぬるいものばかり食べてるわけじゃないよ。(←強調!)頭が痛くなるほど冷たいものや、舌が焼けるほど熱いものには美味しさを感じないだけなんだ。」
そう。味がよく分かるのは「ぬるいもの」・・・そういえば有名なフランスのグルメ評論家も同じようなことを言っていました。人肌に近い温度のものが素材の持ち味を最もよく引き出すとか・・・そして、ぬるくて美味しいものの決定版といえば、フランスのデザートに代表される「冷たいお菓子に温かいソース」をかけたもの。またはその逆。例えば、アイスクリームにソテーした果物の温かいソースの組み合わせ。シンプルなバニラアイスがキャラメル化した熱いソースに溶かされてその部分はまた別のソースと化し、果物の酸味と相まって幾重にも美味しさが広がる・・・そしてその温度はといえば・・・溶けていないアイスクリームはもちろん冷たいのですが、こめかみにぎゅうっと来るような冷たさではなく、ぬるいソースと一体化してなんだか不思議な美味しさなんです。少量のバターと砂糖でお好きな果物をソテーして市販のアイスクリームにかければでき
てしまう簡単で立派なデザートですから、是非一度お試しを!同じ妙味を味わうお菓子として、シューの中にアイスクリームを詰め、温かいチョコレートソースをかけた「プロフィットロール」、また、逆パターンは、温めた「タルト・タタン」(リンゴのタルト)に冷たいアイスクリームをソースとして添えたもの・・・など、そのヴァリエーションと美味しさには脱帽するより他ありません。さすがはグルメ大国。美味しいものを追求するには冷たいものは冷たく・・・なんて常識を覆すこともはばからない!chapeau
を脱ぎながらも、supermarché
で買ってきたビールをこっそり冷凍庫でギンギンに冷やして飲んでいる私なのでした。
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